お茶の時間
皐月のお菓子「緑燃ゆ」
初夏の風が、緑をゆらします
どこまでも伸びやかな 山や林の、濃く淡い 緑の姿。
風にそよぐ 無数の葉のあいだから 洩れる陽射しの瑞々しさ。
吸い込まれそうな 季節のご馳走
道明寺のアクセントに 小豆あんの深みを添えて。
五月の本席(奥の八畳の茶室)のしつらい
皐月は 茶席が「炉」から「風炉」(ふろ)に変わる刻。
室礼もガラリと変わりまして、ここからは いかにも涼しきように。
火の気配はひそめ、滑らかな万古焼の水指を中心に 爽やかに纏めます。
ここでお気づきのお客様、さすがです。今年のお正客「卯」が、今月に限っては「寅」にその座を譲ります。
いかにも端午の風情のすっきりとした画は、徳川幕府の絵師、狩野常信によるもの。
ワシントン条約が結ばれる ずいぶんと前の時代物でして、軸先には象牙が使われています。
黒く見える箇所、こちらは 象の虫歯です。
唐物籠には虎の尾を活けて、お軸の世界に応えます。
今月は見どころが、もう一つ。
質実剛健な鎌倉彫の香合「頼朝」が登場。
ときは鎌倉時代、宋から伝来した堆朱(ついしゅ)と呼ばれる彫漆の美術品の到来に大きな感銘をうけた和の技術者たちが、宋に続けと始めた彫り物。
このサイズが頼朝。ちなみに中のサイズは義経、小ぶりなものが 政子と呼ばれます。
立礼席のしつらい
「立礼席(りゅうれいせき)」とは、椅子とテーブルの茶室。
茜庵本店で喫茶をご利用のお客様には、こちらのスペースでお菓子をお楽しみいただきます。
端午の節句を迎える今月は澤菖蒲のお軸を取りあわせました。
すみのえの浅さは沼のあやめ草
松とかはせるねさし成らん
浅澤沼のあやめ草といえば、見事なものとして愛されてきた住之江(=住吉)の情景のひとつ。
澤菖蒲と松の根が交わっているところが、なんとも縁起がよいことよなあ、と
お題(澤菖蒲)を、歌枕(住吉の松)を引いて詠んでいるように思います。
染付唐子の水指は、子供の日になぞらえた めでた柄。
愛らしい子供たちが、のびやかに遊ぶすがたをうつしとって。
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しつらいとは、和のコーディネート遊びのようなもの。
リラックスしてお菓子を召し上がっていただけるだけで何よりですが、しつらいの遊び心まで覗き見ていただくと、ちょっとお楽しみが増えるかもしれません。
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