お茶の時間
睦月のお菓子「花の夢」
歌会始の勅題「夢」をもとに作りました
穏やかな光で、新年をむかえます。
奈良時代から続く、宮中の伝統行事ー令和七年の歌会始の勅題「夢」をもとにお作りした、睦月のお菓子。
はるを焦がれているうちに、ふと夢に出てきた雪の花。
淡く儚い色合いで仕立てた、初夢きんとん。
梅かさくらか、春はすぐそこ。
一月の本席(奥の八畳の茶室)のしつらい
今月、ぜひご覧いただきたいのが 本席の正月支度。
凛とした佇まいのなかに、この時期ならではの華やぎ。阿波焼きの花入の存在感を重ねます。
歌会始のお菓子に準えて、飛鳥井雅章の筆を据えました。
歌会の書(懐紙)は 紙の先頭に手をおいて、親指のところから書き初めたそうで、この手印の余白がのこっているのが、この軸の面白いところ。
歌人として名高い雅章公は、書の達人であり、蹴鞠マスター。
権大納言のほか、朝廷と幕府の連絡役である武家伝奏(ぶけてんそう)も務めた、稀代のスーパースター。
その功績から、和歌の書式も三行三字の定型とは異にする「三行五字」という、飛鳥井家特有の型が認められています。
いかにも、三行五字。
ちなみに雅章は阿波藩三代 蜂須賀光隆が師事したことでも知られる、徳島ゆかりの貴人。
寿棚には、和田桐山による肩つきの水指。
菊の平棗と唐松白張り屏風で、格をそろえます。
立礼席のしつらい
松の内には ゆずり葉とウラジロのお軸でしたが、明けからはこの方一択となりました。
七福神の中で 唯一の日本の神様、ゑびす神。
にこにこ笑顔に 釣り竿の姿ー これは「釣して網せず」という教えを表わすもの。実はゑびす神の好物は鯛ではない。海老(!)だそうで、鯛は人々へのご褒美用に、御自ら釣りあげるものなのだとか。優しい。
では、なぜ一匹なのか。これには深い意味がありまして、まず「釣して網せず」ー欲張らずに地道にコツコツ励めよ という教えがひとつ。
それから、誰でもいただけるのではなく、高い目標を持って世のため人のために仕事に励む人だけに、ということが、もう一つ。
巳の年も、欲張らず、地道に。
春へ。
・・・・
しつらいとは、和のコーディネート遊びのようなもの。
リラックスしてお菓子を召し上がっていただけるだけで何よりですが、しつらいの遊び心まで覗き見ていただくと、ちょっとお楽しみが増えるかもしれません。
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