お茶の時間
睦月のお菓子「はつ花」と室礼
はつはるを、ことほぎて
大切なお客さまと、仲間たちと あたらしい春を迎えられたーそのシンプルな喜びを、お菓子に。
宮中行事「歯固めの儀」に由来する、つきづきしいお菓子。長寿を願う “押鮎”に見立てた牛蒡と人参、お雑煮に見立てた紅味噌餡を やわらかな羽二重餅でくるみます。
一月の本席(奥の八畳の茶室)のしつらい
今月、ぜひご覧いただきたいのが 本席の正月支度。
軸にも白兎を据えましたら、紅の椿と白の梅を重ねます。
そのまま目線を、どうぞ右下へ。
うさぎの相棒といえば、この方。
女流歌人にして尼僧 大田垣 蓮月(おおたがき れんげつ)による 亀の香合。
蓮月の筆は美しいー素朴で愛らしい焼き物に、たおやかな文字を連ねた箱書き。独特の組み合わせが 「蓮月焼」としてたいそう評判になったのは、 江戸末期のこと。
これにより得た富は その全てを貧民救済にあてたという、幕末の人物。
清々しい迎春の風を、水指と棗にも まとわせて。
立礼席のしつらい
1月といえば、お楽しみがもうひとつ。「えべっさん」こと、商売繁盛・家運隆盛を祈願する明るいお祭りから。
七福神の中で 唯一の日本の神様、ゑびす神。
にこにこ笑顔に 釣り竿の姿ー これは「釣して網せず」という教えを表わすもの。実はゑびす神の好物は鯛ではない。海老(!)だそうで、鯛は人々へのご褒美用に、御自ら釣りあげるものなのだとか。優しい。
では、なぜ一匹なのか。これには深い意味がありまして、まず「釣して網せず」ー欲張らずに地道にコツコツ励めよ という教えがひとつ。
それから、誰でもいただけるのではなく、高い目標を持って世のため人のために仕事に励む人だけに、ということが、もう一つ。
欲張らず、地道に正直に参りましょう。
卯の愛嬌に、亀の確かな歩み。 明るい方向に向かう、一年となりますように。
しつらいとは、和のコーディネート遊びのようなもの。
リラックスしてお菓子を召し上がっていただけるだけで何よりですが、しつらいの遊び心まで覗き見ていただくと、ちょっとお楽しみが増えるかもしれません。
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