お茶の時間
睦月のお菓子「はつはる」と室礼
一月のお菓子の銘 :はつはる
お寒い中、ようこそお越しくださいました。
さあ さあ、お入りください。
大変なことも多かった、丑年の一年。
それでも 大切なお客さまと、仲間たちと あたらしい春を迎えられたーそのシンプルな喜びを、お菓子に。
ふっくらとあわせた2層の こなし。
餅花のあしらいに、優しい横顔がまた、新春の気分です。
切り分けると、優しい甘さに仕立てた黄身あん。
一月の本席(奥の八畳の茶室)のしつらい
今月、ぜひ目をむけていただきたいのが、本席の正月支度。
床の間のお軸は蔵人右中弁藤原光榮の「春日同詠竹裏 聴鶯声和歌」。
呪文のようで一寸目眩がしますが、ルールがわかれば大丈夫。
「蔵人右中弁」=くろうどのうちゅうべんまでは彼の役職で、20代後半の歌会での筆だそう。
藤原光榮は江戸時代中期に活躍した人物にして、エリート官僚(この後、内大臣にまでのぼりつめます)。
さらには歌人としての腕前も抜群で、当時の天皇にも和歌の手ほどきを行ったのだとか。
天はどれだけ才を与えるのか、いやいや、知れない苦労があったのかも・・・などと、令和の菓子屋は思うわけです。
とりあわせた置花入は、永楽善五郎の「髙砂」。
キュートな鯉耳、胴部の蔓唐草、口縁内側に鋸歯文、頸部には能の謡曲『高砂』にある「尉と姥」(老夫婦)が、表と裏に。
お棚は裏千家十四代家元 淡々斎が好んだと言われる「寿棚」を、正月かざりでちょっとオメカシ。
この時期、車のミラーにつけている方も多いですよね。
お抹茶を入れる「棗(なつめ)」は鳳凰の大棗を合わせました。
立礼席のしつらい
「立礼席(りゅうれいせき)」とは、椅子とテーブルの茶室。
茜庵本店で喫茶をご利用のお客様には、こちらのスペースでお菓子をお楽しみいただきます。
水指は「砂金袋」、こちらも取手がチャーミング。
掛花入は、信楽。
あわせたのは「松寿千年翆」(しょうじゅせんねんのみどり)。
裏千家十四代家元 淡々斎の書。
“今風”に言えば、本席の「寿棚」と、リンクコーデのおたのしみ。
床の間の足元には新年らしく、福を呼ぶと福鈴をあしらいました。
あたりまえのことが、当たり前に迎えられることの喜びを 深く感じた、丑の年。
寅の年は、しなやかで優しい一年となりますように。
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しつらいとは、和のコーディネート遊びのようなもの。
リラックスしてお菓子を召し上がっていただけるだけで何よりですが、しつらいの遊び心まで覗き見ていただくと、ちょっとお楽しみが増えるかもしれません。