お茶の時間
如月のお菓子「梅かさね」と室礼
二月のお菓子の銘 :梅かさね
襲の色目(かさねのいろめ) とは、衣を2枚以上重ねた際の、色の組合せのこと。「梅かさね」はその組合せのひとつで、表は濃紅、裏は薄紅。
平安時代の絹は非常に薄く、裏地の色が表によく透けるため、独特の美しい色調が表現できたのだとか。
後ろ姿もどことなく、雅の風情。
ほんのりと、チョコレートの餡で季節をまとわせて。
さて現代でこそ、桜が主役の春ですが 万葉の世でいう「花見」といえば、梅のこと。
今月の庵でも たっぷりと梅を重ねて 待ち侘びた春の訪れを ことほぎたいと思います。
二月の本席(奥の八畳の茶室)のしつらい
梅に加えて今月の主役に据えますのは、このお軸。
立ち雛のお軸は、女流画家の手によるもの。徳島ゆかりの画家 守住貫魚の娘、周魚(ちかな)の繊細なタッチ。あわせた軸装も、いかにも雛の気分です。
軸棒にも梅があしらわれておりまして、なんとも心憎い。
そのまま目線を、どうぞ右下へ。 白梅の香合は、 14代永楽得全の妻 妙全の手によるもの。
独特の世界観と「お悠さん」の愛称で知られる彼女は、二十歳(!)で千家十職の14代目に嫁いだ女性。
茶道衰退の折、経済的にも大変な苦労を強いられながらも、窯を開き、ウィーン万国博覧会はじめ海外にも積極進出し、女手ひとつで千家十職「永楽家」復興の道を掴んだ、しなやかで強い女性。
摘み(取手)の細工を、梅に見立てた水指も、永楽家の手によるもの。
立礼席のしつらい
「立礼席(りゅうれいせき)」とは、椅子とテーブルの茶室。
茜庵本店で喫茶をご利用のお客様には、こちらのスペースでお菓子をお楽しみいただきます。
立礼でも、今月はまずは お軸をみていただきたい。
「桃李一蹊春=とおりいっけいのはる」、とよみます。
山深くひっそりと咲く花や実に誘われて人が集まり、やがて一本の道を成す。
物言わずとも、素晴らしい人や 考えのもとには 多くの人が自然と集まってくることを例えたお軸。
雅な気分で、春の華やぎをあわせます。
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しつらいとは、和のコーディネート遊びのようなもの。
リラックスしてお菓子を召し上がっていただけるだけで何よりですが、しつらいの遊び心まで覗き見ていただくと、ちょっとお楽しみが増えるかもしれません。
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