お茶の時間
如月のお菓子「想い」と室礼
二月のお菓子の銘 「想い」
庵の庭の蹲(つくばい)で、小鳥たちが水遊びをはじめて。
ゆっくりと、春へ。
四季のなかで、いずれが一番かーこちらは意見が分かれるところですが、みなが等しく待ち遠しい季節は、春であるように思います。
陽だまりの記憶に、柔らかにひろがる 春のいろ。
待ち侘びた季節への想いを、梅ひとひらに映し取って、ひとくち。
チョコレートと薄墨の二層のあんは、和洋折衷なバレンタイン限定のおたのしみ。
二月の本席(奥の八畳の茶室)のしつらい
今月、まずは、お軸にご注目。古い扇子をほどいて軸に仕立てた「寿色」。
寿色の文字の横に「壬寅(みずのえのとら)」の文字が見えます。
ここが、細かすぎて伝わらないお楽しみどころ。
干支とは正式には「十干」と「十二支」の組み合わせ。
「十二支」はお馴染みの動物たちですが、「十干」とは、1から10まで数えるための言葉です。
甲、乙、丙、あたりまでは聞いたことがあるような。
その後、丁(てい:ひのと)、戊(ぼ:つちのえ)、己(き:つちのと)、庚(こう:かのえ)、辛(しん:かのと)、壬(じん:みずのえ)、癸(き:みずのと)と続きます。
2022年は十二支でいうと「寅」、十干では「壬」となり、干支は「壬寅(みずのえとら)となります。
要するに 時代がぴったり、回ってきたお軸ですよということ。
青松多寿色、華やかなものに目を奪われがちですが
松の青さのように、うつろうことのない不動のものこそ、寿の色。
天板が円形、中板が三日月形の棚は「日月棚」と呼ばれます。
(円形の天板で太陽を、中板で月を表現し、陰陽を表現していると言われる形状)
春を告げる花、梅が描かれた「梅月棗」をあわせて。
永楽善五郎の水指。”摘み”と呼ばれる取手部分はどこか、梅の花のよう。
(永楽善五郎は、京焼の家元で千家十職。
「千家十職」とは、千利休を祖とするお茶の家元が使う茶の道具を制作する工芸の家筋十家の総称です。)
立礼席のしつらい
「立礼席(りゅうれいせき)」とは、椅子とテーブルの茶室。
茜庵本店で喫茶をご利用のお客様には、こちらのスペースでお菓子をお楽しみいただきます。
立礼でも、今月はまずは お軸をみていただきたい。
「桃李一蹊春」とおりいっけいのはる、とよみます。
山深くひっそりと咲く花や実に誘われて人が集まり、やがて一本の道を成す。
物言わずとも、素晴らしい人や 考えのもとには 多くの人が自然と集まってくることを例えたお軸。
梅の棗に、ぼんぼりの蓋置をあわせて。
壬寅」の年は、「陽気を孕み、春の胎動を助く」とされる年。
優しい春を、まちわびて。
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