お茶の時間
コーヒーと和菓子のマリアージュ
秋、コーヒーについて学びを深める
10月1日は「コーヒーの日」ってご存知ですか?
世界一のコーヒー豆の生産国ブラジルでは、豆の収穫と出荷のサイクルを10月1日から翌年の9月末とされているそう。いわば、10/1はコーヒーの新年のはじまりの日。
また日本では肌寒くなるこの時期からコーヒーの需要が高くなることから、1983年に全日本コーヒー協会によってこの日が「コーヒーの日」と定められたのだとか。
吹く風に涼しさを感じるこの季節は、香り立つコーヒーの匂いにそそられます。
茜庵のある四国徳島は、1世帯あたりのコーヒー購入金額が全国第1位になったこともあるほど「コーヒー好き」が多い街。庵主も毎朝コーヒーを愉しんでいます。
もっとコーヒーのことを知りたい!
お茶と合わせるイメージが強い和菓子だけれども、実はコーヒーとも好相性。
“コーヒーと和菓子の美味しい関係”をもっと知りたくて、徳島市で『自家焙煎珈琲 カフェ・ケストナー』を営む佐藤文昭さんを訪ねました。
正しいコーヒー、良いコーヒー
「美味しいコーヒーを飲むためには、まずは良質な豆を適切に焙煎していることが大切です」
そう開口一番に語る佐藤さん。
信頼できる生産者から購入し、よく熟してたものが「良質な豆」。
そうした良質な豆が持っている個性を焙煎で最大限に引き出してやることによって、本当の美味しいコーヒーができるのだと佐藤さんは言います。
色味から好みを見つけ出す
ケストナーの棚には瓶に入ったコーヒー豆がずらりと並んでいます。
たくさんの種類がある豆の中から好みのコーヒーを選ぶにはどうしたらいいか、庵主は尋ねました。
「どの色のコーヒーを飲みたいかで選ぶのが、世界の基準になってるんですよ」と佐藤さんは焙煎度合の異なる2種類の豆を見せてくれました。
確かに同じ豆だけど見た目の色合いが全く異なります。
「まずは浅煎り、中煎り、中深煎り、深煎りの4種類を飲んでみてください」。
佐藤さんがそう声をかけると、カウンターのスタッフが丁寧にハンドドリップで淹れ始め、店内にはいい香りが漂います。
ほどなくして、テーブルの上には4種類のコーヒーが運ばれてきました。
1度に違う種類のコーヒーをいくつも飲み比べるいうのも滅多とない経験。
それぞれに香りや苦み、酸味が異なることがよくわかります。
産地の違いを感じる
次に、同じ浅煎り、中煎り、中深煎り、深煎りでもさっきとは異なる生産地の豆を挽いて淹れてくれました。
同じ焙煎度合でもこれまた異なる味わいで、まるでコーヒーで世界を旅しているような気分になります。
「私は比較的浅煎りが好きなんんだけど、家族は深煎りの濃い味のが好きなんです。
たまにお湯で割って薄めることがあるんですけど、それって邪道なんでしょうか?」
佐藤さんは「全く問題ないです。そうしてお好みで飲んでいただくのが一番です」。
心強いひとことに、ホッと頬を緩める庵主。
コーヒーと和菓子の相性はいい
「和菓子とコーヒーは相性がいいんです。アンパンとコーヒーって最高の組み合わせですよね」と佐藤さん。
ではこれだけいろんな種類のあるコーヒーに、それぞれ相性のいい和菓子はなんだろうと尋ねてみました。
「羊羹には深煎りが合うのではないでしょうか」
それならば、と「阿波ういろう」と深煎りのケニアを合わせてみると、なるほど確かに見事なマリアージュ。
「佐藤さん、このまぁるいのはうちの羊羹。ちょっと食べてみて」と『和三玉』を佐藤さんにすすめる庵主。
『和三玉』はとょっと凝った作りの一口菓で、庵主の想いがたっぷりとつまった和菓子。
濃茶、鳴門金時、小豆と3種の味のうち、佐藤さんが手に取ったのは北川柚子の自家製ピールが入った”鳴門金時”。
「お、これはちょっと酸味がありますね。
この華やかな酸味には、同じように酸味を感じる中煎りのコーヒーがよく合いますね」
「次はきんとんをぜひ召し上がってみてください。これは何が合いますか?」
“きんとん”とはあんこを練り切り餡や求肥で包み、裏ごししたそぼろ状の餡をまぶした生菓子のこと。
茜庵の工房で毎朝職人がひとつひとつこしらえています。
「上品な口当たりですね。
これはブルーマウンテンとよく合うと思います」
コーヒー通でなくてもその名を知る「ブルーマウンテン」。
香りがよく、ほのかな甘みがあって、バランスのよい繊細で深い味わいのコーヒーだと佐藤さんはいいます。
きんとんとブルーマウンテンを合わせていただくのは庵主も初めての経験です。
「確かに、これは合いますね」とうなずきます。
コーヒー豆は生鮮食品
コーヒーを抽出するお湯の温度について尋ねてみました。
「コーヒー豆は生鮮食品なんです。なので焙煎してから少しずつ変化していきます。買ってすぐは82〜3度の少し低めの熱湯で、2〜3週間経ったら90度くらいの高い温度の熱湯で淹れると美味しいですよ」と佐藤さん。
店で豆を購入される方にも1ヶ月で飲みきれる分をすすめているそうです。
「豆」…コーヒーと和菓子の共通点
コーヒー豆は農産物。
なので、石粒や木屑などの異物のほか、欠点をもつコーヒー豆が混じっていることがあります。
カフェケストナーでは焙煎する前に、かならずこうした「欠点豆」を手でで1つ1つ除去しています。
「ハンドピック」と呼ばれるこの作業、茜庵も同じように欠点のある小豆をひとつひとつ除去してから、焚いていきます。
佐藤さんと茜庵の出会いは、「豆」がきっかけ。
コーヒーを飲みに訪れた庵主は、こうして店内の片隅でハンドピックしていた佐藤さんの姿をみて、声をかけたこと。
「正しいコーヒ、良いコーヒー」の原点が「和菓子と同じですね!」と意気投合したのがはじまりでした。
「マリアージュ」とは、飲み物と食べ物のベストマッチな組み合わせのことなんだとか。
コーヒーが美味しい季節となりました。今夜は「和菓子」とぴったりな組み合わせを、探してみませんか。
自家焙煎珈琲 カフェ・ケストナー
〒771-0131 徳島県徳島市川内町大松255−3
088-665-7277
https://www.rakuten.co.jp/cafe-kastner/
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