お茶の時間
卯月のお菓子「朝堀きんとん」
みずみずしい、朝掘りたけのこをお菓子に仕立てて
和食の大家といえば、北大路魯山人。
京都から東京まで鮎を電車で運ばせた逸話は有名ですが、その魯山人でさえ、竹の子には旅をさせなかったー必ず産地で食するべしと書き残しています。
竹の子は光に敏感な野菜。光を感じるとかたくなり、あくも強くなる。
また、竹林は早朝までは水分を多く含むため、「朝掘り」こそが、瑞々しくて美味しい。
ほんのりと山椒でスパイスをきかせた、初夏のきんとん。おいしい竹の子の産地でもある、地元徳島の自然さまに感謝した一品です。
四月の本席(奥の八畳の茶室)のしつらい
思わず二度見をしてしまう、ユーモラスな土筆(つくし)の画讃からはじめましょう。
明治初期の頃 冷泉為理、三益堂、土佐光文の合作。即席のコラボレーションの席画のようです。
三益堂は大店の旦那にして、お二方のスポンサー的な役割だったのではと察します。
宴もたけなわ、さて旦那さま一筆如何。
ならばと筆を手にした三益堂が大きく「土筆」、ここに雀をチョンと宿らせたのが、土佐派の絵師、光文のご愛嬌。
そうきましたかと 藤原定家の子孫にして 和歌の名手 冷泉為理が続きます。
「雀さえ 愛でて宿るは竹ならで さても太しき 土筆かな」 と締めましたならば、やんややんやと大盛りあがりー
さながら、そんなところでしょうか。いやはや、楽しそうな 陽のお軸。
香合は水鳥、水指は真葛香斎の耳付花丸草花をあわせて、花鳥風月と遊びます。
立礼席のしつらい
「立礼席(りゅうれいせき)」とは、椅子とテーブルの茶室。
茜庵本店で喫茶をご利用のお客様には、こちらのスペースでお菓子をお楽しみいただきます。
朧といえば、春の季。
秋の澄んだ月に対し、水蒸気のベールがかかったように見える朧月夜の楽しみも、この季節ならではとされています。
どこか朧な風情のお軸とともに、季節の花と、節句の支度。
現代織部の茶碗が、初夏の息づかいを伝えます。
しつらいとは、和のコーディネート遊びのようなもの。
リラックスしてお菓子を召し上がっていただけるだけで何よりですが、しつらいの遊び心まで覗き見ていただくと、ちょっとお楽しみが増えるかもしれません。
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